杏里のデビュー曲「オリビアを聴きながら」（1978年）のプロモーション時期では、ライヴのときなどで僕が彼女のうしろでベースを弾いていました。もう40年以上も前の話ですね（笑）。年齢も僕とそんなに変わらないハズですし、僕はそのバンドのなかでも年齢が若いこともあってけっこう仲良くなった記憶があります。で、この曲は林哲司さんの作曲で、アレンジは角松敏生さん（林哲司との連名）。彼女の代表曲でもあり、僕もすごく好きな曲です。コード進行も秀逸で、半音ずつ下がるベース・ラインなど好きなポイントがたくさんありますね。 　今回のアレンジのコンセプトは、歌のメロディとベース、そして和音をしっかりと出すこと。これまではベースと歌メロのふたつを和音として鳴らすとそれだけで“ソロ・ベース”として成り立つことが多かったんですが、この曲はコード・ワークに特徴があるので、その部分はしっかりと再現する必要があります。コードの特性音や半音の動きといった部分が再現できてこそこの曲の“らしさ”が表現できるわけです。そのためにはいつもよりもさらに開放弦を多用したりして、だから曲のキーをどうするかは重要でした。あとは冒頭部分の音数を意図的に少なくしているのですが、これは終盤に向かうにつれて音数を増やしていくことで盛り上がりを演出しています。