■作曲家からのメッセージ 『麒麟がくる』の楽曲を演奏される際は、ご自身の感情を自由に表現していただけたら幸いです。この音楽は、演奏する人も、聴く人も、皆が楽しむために作られた音楽であり、練習やテクニックを学ぶための曲ではありません。記載されているテンポやダイナミクスは演奏する際の目安であり、意識しすぎなくて大丈夫です。 『麒麟がくる』の音楽は、明智光秀が生きた時代に存在したであろう武将や武士たちの忠誠心や克己心、裏切りや日和見主義など、さまざまな出来事に思いを馳せ、そのインスピレーションから生まれました。戦国時代は戦争の時代であり、英傑たちは日々生死と向かい合い、裏切りを体験し、時には本来の自分以上の存在になることを目指して己と戦っていたのかもしれません。また武将や将軍の決断により、多くの農民、女性や子ども、教師、宗教家など、戦に参加しない一般人も常に日々の生活に影響を受けていたと思われます。想像するに、当時の日本人は生活の脅威を日常的に意識し、故に人としての生き方やモラルについて考え、平和を願い続けたのだと思います。 このような思いを織りまぜて『麒麟がくる』の音楽は生まれました。皆様もご自身の思いや感情を、演奏を通じて自由に表現していただけたらと思います。
◆麒麟がくる メインテーマ Warrior Past について この楽曲は5つのパートで構成されており、A-B-A-C-A のロンド形式となっています。テーマ部分であるA パートは3回登場しますが、それぞれに異なる思いが込められています。以下はリハーサル番号のアルファベットで解説します。 【A】絶え間ない戦や、民と大名たちの対峙から生まれる困難や無慈悲さを原始的かつ野性的に表現しています。それとともに、人々が懸命に生きる様子や、平穏のために国を一つにしたいという思いなど、ポジティブな要素も表現しています。 【B】荒々しい時代にありながらも平和への思いや期待感がふくらんでいくパートで、ノスタルジックな雰囲気も醸し出されています。 【C】時代はいまだ大きな戦乱のさなかにあることが表現されています。 【D】この曲が大きな転換を迎えるパートです。柔らかなメロディー、浮遊的なリズム、変拍子が表現するのは、平和の象徴である神獣「麒麟」の到来です。 【E】冒頭のテンポに戻り、【F】へと続く4小節ですが、フィナーレへ向けて勢いを増すイメージで、4分音符=72としました。 【F】光秀、信長、秀吉、家康などの英傑たちが夢見て命を燃やした「天下統一」という大きなゴールに向けての力に満ち溢れているパートです。壮大な混声コーラスとオーケストラが、混沌の世の中に存在する、時代を動かす大きなうねりと希望を表現しています。 ●より詳しい演奏についてのメッセージはこちらへ(NHK出版のサイトに移動します) |