ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 「悲愴」 第1楽章 [STAGEAクラシック作曲家・シリーズ (グレード5〜3級) Vol.6 ベートーヴェン]

同じようなフレーズが繰り返される部分をカットしたアレンジになっています。ヘンレ版の楽譜をもとにアレンジしましたが、原曲にはないダイナミクスを加えています。これは、あくまで一例と捉えて、様々な演奏を参考にしながら、書かれたダイナミクスに囚われすぎず、それぞれの解釈で演奏していただきたいと思います。
Graveで始まる冒頭[A]の部分は、fとpのメリハリをつけるのはもちろん、fの音をいかに重く深い音で出せるかが重要です。pの部分はあまり平面的に弾かず、積極的にタッチやエクスプレッションペダルを使い、表情をつけましょう。また、譜例のように、本来fpの指示のところを、そのような急激な変化をつけるのではなく、ゆるやかに下がる仕組みにしました。8分音符ひとつ分くらいをfで聞かせてから、ディミヌエンドするイメージで演奏してください。L.K.がfらしさを出しますので、とくに左手のタッチをしっかり弾きましょう。
ハ短調だった[A]に対して[B]は変ホ長調で始まります。[A]と同じ動機ですが、調性による雰囲気や気持ちの違いを感じとって演奏してください。また、pとffのメリハリを意識して、タッチでしっかり表現しましょう。
[C]以降、ところどころテンポエコーを使っていますので、設定されたテンポに合わなければ、積極的に変更してください。[C]のMEMORY[14]からMEMORY[15]へのレジストシフトが少しやりづらいかもしれませんが、左手の離鍵と同時くらいにシフトすることを意識するとよいかもしれません。
[D]のMEMORY[4]とMEMORY[5]は、両方ともストリングの音色になっていますが、一方がチェロでもう一方がバイオリン、というようにパートが異なる仕組みで考えてありますので、チェロのフレーズとバイオリンのフレーズ、それぞれのフレーズをまとめるイメージで演奏しましょう。
[H]のMEMORY[6]と[J]のMEMORY[13]のU.K.に、ティンパニが発音する箇所があります。その音は必ずイニシャルタッチを意識してください。
3度目のGraveである[O]は、ここまでの同様の箇所と違い、木管楽器を中心にまとめてあります。それ以前のGraveとのサウンドの差を感じて演奏してください。
[P]の7～9小節は、都合上、ペダルにテンポエコーがかかっている状態です。この小節ではディレイ効果は不要なので、返ってくる音が認識できないくらい音価を長めに保つことを心がけてください。 （岩崎 孝昭）