前奏の4小節ですでに種明かしをしていますが、「月光ソナタ」でベートーヴェンが展開したピアノのテクニックをふんだんに取り入れてアレンジしてみました。皆さんが慣れ親しんでいる「月光」の表現をそのまま「彼こそが海賊」に持ち込んで演奏しましょう。[A]～[E]は正確なテンポを念頭に置いて突き進んでください。con fuoco（＝熱烈に）の表記がありますが、あくまでも冷静に激しさを打ち出してもらいたいですね。[F]はソナタの緩徐楽章をイメージしてアレンジしています。ラストの盛り上がりを控えた緊張感を含みつつ、おだやかで落ちつきある表情でメロディーを歌いましょう。続くquasi Cadenza（＝カデンツァ風に）は、テンポにとらわれ過ぎず自由に表現してください。ここではベートーヴェンが得意にしていたコーダ付近における“音楽的な焦らし”のパターンを取り入れてみました。終わりそうで、終わらない感じをどう演出するか…がカギになるでしょう。 （大宝 博）