アヴェ・マリア

ジャック・アルカデルト（1504‐68）は、盛期ルネサンスのフランドル楽派の作曲家で、創作の中心は教会音楽ではなく、マドリガーレやシャンソンのような世俗音楽にあった。今日、「アルカデルトのアヴェ・マリア」として親しまれている本作も、その例に漏れず、彼のシャンソン「人々は愛するために何でもやる」の歌詞を、19世紀フランスの作曲家が改編して1845年に発表したものである。音楽全体が明るく楽天的に聞こえるのは、原曲の題名を見れば納得がいくところ。ちなみに、人気の世俗音楽の歌詞を変えて宗教曲にすることを「コントラファクトゥム」といい、当時は巷で流行したスタイルだったらしい。（解説：渡辺謙太郎）