モンタギュー家とキャピュレット家 〜交響組曲『ロメオとジュリエット』より

セルゲイ・プロコフィエフの代表作、バレエ音楽『ロメオとジュリエット』は、1936年にシェイクスピアの有名な戯曲を題材にして作曲されました。バレエ音楽としてだけでなく、『3つの管弦楽組曲』と『ピアノのための10の小品集』も作られています。その中の1曲「モンタギュー家とキャプュレット家」は、CMなどでも耳にする名曲です。バレエのストーリーでは、名門の両家が敵対関係であったため、ロメオは仮面をつけて、ジュリエットの家での舞踏会に忍びこみ、彼女を見て一目惚れをします。曲は3部形式で、前半と後半は「騎士たちの踊り」の主題が支配します。両家の威圧的な雰囲気をイメージしながら、重厚な低音の響きと、闘争心が強まるようなテヌートを伴う付点のリズムを明確なタッチで奏でてください。セコンドは、プリモの旋律を引き立てられるようなペダリングを意識してみましょう。中間部Dは、一転して叙情的な音楽となり、ジュリエットが両親から結婚を勧められたパリス侯爵と踊る場面です。ほんのすぐ後にロメオとの運命的な出会いが訪れ、はじめて恋心が芽生えることを今はまだ知りません。プリモの清純で美しい旋律は、弱音を大切に歌わせます。セコンドの左手は弦楽器のピチカートのように弾ませましょう。高音で装飾される副旋律は神秘的に、各声部がオーケストラのような多層的な響きになるような音色作りを、4手で目指してください。管弦楽組曲の演奏を聴くことも音作りの参考になります。アレンジにあたり、ピアノ版にはない音も散りばめながら、オーケストラ的な効果と、連弾ならではのダイナミックな表現や手の交差を楽しめるよう作りました。ロメオとジュリエットの心情を音で描き出した傑作を、ふたりで体感してください。