原曲はとても長いですが、緩急がつくようにアレンジしました。なるべく自然なつながりになるように考慮していますが、カットした部分ではどのような展開をしているのか、ぜひ原曲の音源を聴いたり、スコアを見てみることをおすすめします。テンポも音源によって様々なので、お好みのものを見つけてご自身の演奏の参考にしてみてください。
[A]のフレーズにはスタッカートが多くついていますが、短く弾くだけでなく、一音一音しっかりとしたタッチで弾いてください。また、曲の出だしの音はレジスト設定により、右手でB♭音を弾くとトランペットのA音が鳴ります。不協和な響きですが、そのような和音の緊張感も感じながら演奏しましょう。
[B]はアフタータッチを使い、フレーズのまとまりを意識しながら演奏してください。低音の単旋律から始まり、少しずつ声部が加わっていく美しさに加え、次への高まりを感じられるように表現しましょう。
[C]の右手のsfは、イニシャルタッチを全く使わないわけではありませんが、スピード感のあるアフタータッチで強調するイメージが近いかもしれません。また、各鍵盤への指示としてついているffは様々な捉え方ができますが、右手の16分音符に関しては、次の小節の1拍目に向かって強いタッチを維持して弾くとよいでしょう。
[E]の直前は2小節でppからffに変化しますので、とても難しいところですが、次の歓喜のフレーズ、歌詞を迎える劇的な場面でもあると思います。タッチも使って、次のエネルギーを引き出すように演奏しましょう。[E]の右手で弾く弦のユニゾンは、リズムが崩れないように注意し、しっかりとしたタッチで弾いてください。また、ペダルやMEMORY[4]、MEMORY[6]右手のトランペットは、華やかさや軽快さが出るとよいでしょう。
[I]からは各鍵盤への指示としてたくさん強弱記号がついています。原曲のスコアに基づいて表記していますが、ついていないところは弱く、ということではなく、場面に応じてタッチで変化をつけるように意識して演奏してください。例えば[J]の12小節目、1拍目ｆｆ、2拍目sfとなっているところは、sfの方により重みのある強さを加えるイメージがあります。楽譜の解釈は様々あると思いますので、タッチやエクスプレッションペダルのコントロールをいろいろと試し、工夫してみてください。
[J]のMEMORY[6]、MEMORY[9]のペダル、MEMORY[7]、MEMORY[8]の下鍵盤はディレイを設定していますので、はっきり発音することを意識できるようにスタッカートをつけています。[K]からの下鍵盤もディレイを設定しているところがありますが、途中からトランペットも加わるためスタッカートをつけていません。トランペット、弦のディレイ返し、どちらの発音もきちんと鳴るように注意して演奏してください。
[K]は最後までエネルギーを切らすことなく、むしろよりチャージされていくような感覚で弾き切り、曲を締めくくってください。 （川島 容子）