「アヴェ・マリア」という曲は数多く存在していますが、中でも有名なのがバッハの平均律クラヴィア曲集にメロディーをのせたグノーの作品と、このシューベルトの作品です。この曲はW.スコットの「湖上の美人」という叙事詩をもとに書かれた「エレンの歌」の3曲中の3番目の作品です。ドイツ・ロマン派の草分けとして多くの名曲を残して35才で早世したシューベルトの晩年の作品で、美しい和声進行が人を至福の世界に連れて行ってくれます。歌詞は現在ではローマ・カトリック教会のラテン語の典礼文で歌われるのが一般的になっており、本書でもそれを採用しました。これまでに多くの著名な歌手によって歌われてきましたが、プラシード・ドミンゴとロック歌手マイケル・ボルトンのデュオや、イタリアのポピュラー・シンガー、アルバーノも好んで歌っています。原曲は4分の4拍子で、1拍を6連音符で書かれていますが、ここでは8分の12拍子に変更し、見やすくなっています。[A]から13小節までは、1番ではすべてのパートがソプラノ・パートを歌います。ピアノは同じ音型のフレーズが連続しますが、無機的にならないよう感情をたっぷり込めてください。